2006年09月09日

あてどない話

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まるで点のようにしか映らないかもしれないが、あの小さなオレンジこそが太陽だ。

携帯で写真を撮る僕の横で、腕時計を外して何やらブツブツ呟いている老人がいた。
その腕時計で何を計っているのか? 尋ねることはせず、もう何枚か写真を撮った。
ふと目を離した瞬間にも、点のようなオレンジは姿を変える。

やがて夕陽は、西の空に沈んでいって、病棟には夜が訪れる。
夕食を終え、歯磨きを終え、「ちっとも面白いテレビがやってない」と呟いたかどうかは知らないが、早めに老人は床に入る。
使い古した手帳なのか日記帳か、あるいはコクヨの小さいメモ帳を取り出し、今日の出来事を書き出してみる。
誰それが見舞いに来たとか、誰も来なかったとか、検査があったとか、点滴を変えたとか、あるいは何もなかったとか。いや、何もなかったはずはない。ならば忘れてしまっただけか? いや、そんなことはない。確かに今日は何もなかったのだ。きっとそうだ。そうに違いない。
そんな時……日の出の時刻と、日の入りの時刻だけが、昨日と今日を区切ってくれることもある。棒線ではなく、×印でもなく、カレンダーに記された小さな点。明日への点。点と点を繋いで、季節はめぐる。
今年ももうあと4ヶ月ではないか……早いなぁ……
呟いたかは知らないが、微笑んだかは知らないが、老人はそっと目を閉じる。。。

もちろんこれは想像のストーリー。意味なんてない。
何よりこれは点のような、いつまで続くか解らない、あてどない話。。。
posted by kouta at 22:43| Comment(5) | TrackBack(0) | 随筆 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ショート・ショートを読んでいるようでとても楽しいです。
病院に居るとテレビか見舞いしか楽しみが無いんですよね・・・
Posted by むつき at 2006年09月10日 00:16
私も幼い時はよく入院してまいした。。。
夜ひとりぼっちなのはカナリ寂しいです。。。
そのぶんお見舞いに来てもらえると
凄く嬉しくてw
家族の大切さが身にしみたりして(^▽^)
Posted by たれめ at 2006年09月10日 01:22
様子はどうですか?
大事な人に大事な時に触れてあげる事、私はできずに悲しみ後悔しました
時間の許す限りが最善かナ?
Posted by 滝 史絵 at 2006年09月10日 06:21
> むつき さま

ショート・ショートとまではいきませんが、
そんなふうに読んでもらえたら、嬉しいです。

> たれめ さま

夜は確かに長いです。。。
自分が入院したときは、食事がかなり楽しみでした。意外においしい病院だったので。。。
Posted by kouta at 2006年09月10日 22:05
> 滝 さま

時間が許せている自分は、意外にラッキーなのかもしれません。
と、そう思うようにしています。。。

ご心配なく。ありがとう。。。
Posted by kouta at 2006年09月10日 22:08
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